「ドラムがうまくなる方法を科学的に解明して実践し、世界を感動の渦に巻き込みたい」。慶応義塾大環境情報学部の藤井進也准教授(42)は、学生時代にそんな夢を描き、研究を志した。いま、その夢の幅を広げつつ、実現への道を進む。
600人が入る講義室は満席に近い。「音楽を聴いて鳥肌が立ったこと、ありますか? それ、どんな曲でしたか?」。藤井さんが演壇から問いかけると、学生から次々と手が上がる。「ジャーニーの『オープン・アームズ』を聴いたときです。TOTOの『アフリカ』もそうでした」と、いずれも1980年代ロックのヒット曲をあげる声も。
藤井さんは「代表的な鳥肌曲」とも評されるピンク・フロイドの「ザ・ポスト・ウォー・ドリーム」などを流し、音楽で鳥肌が立つとき、人の脳でどんなことが起きているのか、どう客観的に測定するのか、鳥肌が立ちやすい曲の特徴は何か、最新研究を交えて説明していった。
学部生向けの授業「音楽と脳」だ。絶対音感の仕組みや、プロ演奏家とふつうの人の脳の違いなどについて、専門分野である音楽神経科学の研究成果を伝えていく。
授業で自らドラムを演奏
体育の授業にあたる「リズミックトレーニング」では、学生と一緒にドラムをたたく。全身の筋肉や関節をどのように使って音を奏でるのかを、感じ、かつ考えてもらうのが目的だ。うまいかどうかは問わない。
7月には大阪・中之島であるライブイベントに出演し、ドラムをたたく予定だ。
中学時代にドラムと出会った。夢中になり、京都大に進学してからもドラム一色の日々。1年生の中間段階で、ほとんどの単位を落とした。大学の授業はつまらない。ドラムは楽しい。これからどう生きるか。悩んでいたころ、ある教員が授業中に「山が好きだから山の研究を始めた」と言った。
衝撃だった。「好きだからそ…